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マネーフォワードのデータ・AI活用の現在地

こんにちは!マネーフォワードの広報の田淵です。

マネーフォワードでは昨今、データとAIの活用に注力しています。このnoteでは、マネーフォワードのデータ・AI戦略を担う野村さんと、社内でのデータ・AI活用推進をけん引する工藤さんに、マネーフォワードにおけるデータ×AIの現在地についてインタビューをしました。

話を聞いた人:

野村 一仁 /Nomura Kazuhito
執行役員 グループCDAO (Chief Data and Analytics Officer)
AI推進室 室長、データ戦略室 室長

長年データコンサルティング、データ戦略に携わり、マネーフォワードには2023年12月に入社。データ戦略室を管掌、グループ全体のデータ戦略・実行を担当。

工藤 裕之 /Kudo Hiroyuki
執行役員 AI活用推進担当
AI推進室 副室長

BtoB領域において長年マーケティングや営業、事業戦略に携わる。2020年マネーフォワードに入社、2021年よりビジネスカンパニーの執行役員を務め、2024年9月より現職。

ミッションをもう一歩先へ進めるために。AI活用の全体像

――マネーフォワードは現在、データとAI活用に力を入れています。なぜマネーフォワードがデータ活用、AI活用に取り組むのか、背景を教えてください。

野村:マネーフォワードのミッション「お金を前へ。 人生をもっと前へ。」に強く結びついています。私たちは多くの企業や個人にクラウドサービスを提供することで、お金にまつわる作業を楽に、便利にしてきました。

しかし「お金を前へ。 人生をもっと前へ。」というミッションを本当の意味で実現するためには、個人の人生や企業の成長にもっと貢献していかなければいけません。「会計管理のツールが使えて便利」といった価値を超えて、ユーザーの皆さんのお金に関する幸せや成功に貢献したい。そう考えたときに、その一つの方法としてAIというソリューションは不可欠なのです。

――なるほど。ではデータ・AI活用においてどのようなビジョンを掲げていますか?

野村:AI事業にはいくつかの種類がありますが、マネーフォワードが目指すのは「業務特化型アプリケーション」のトップランナーです。

AIサービスにはいくつかののレイヤーがあると考えられますが、例えば半導体、いわゆるCPU・GPUのチップを作るビジネスプレイヤーもいれば、OpenAIのようなAIモデルを作る企業が突出した活躍を見せていたりもします。

その中でマネーフォワードが担っていきたいのは、業務特化型アプリケーションの領域です。そして、業務特化型アプリケーションの領域において優位性を打ち立てるには何が必要かというと、実は技術ではなくてデータ。そして専門的なドメイン知識なんです。

業務特化型アプリケーションは、AIが学習するデータの質が高く、業務の目的に沿っているほど、より優れたプロダクトになるからです。

その点、マネーフォワードはファイナンス領域において「多くのデータ」と「深いドメイン知識」の両方を備えていると言えます。

というのも、マネーフォワードは法人・個人のファイナンスにまつわる包含的なデータをお預かりしているからです。法人で言えば、『マネーフォワード クラウド』を通して、管理会計や資産情報、インボイスも含めた取引情報や給与計算といったデータを抱えています。ある意味、どんな金融機関よりも網羅的なお客様のファイナンスデータをお預かりしているのです。

長くなりましたが、こういったデータを生かして、優れた業務特化型のAIアプリケーションを作ることが、これからのマネーフォワードがデータ・AI活用で目指すビジョンです。

執行役員 グループCDAO、AI推進室室長、データ戦略室室長 野村 一仁

社内のAI活用推進の現在地

――マネーフォワードでは社内でもAIの活用を進めていますね。いつからAIの社内推進はスタートしたのでしょうか?

工藤:2023年の年末ごろから、代表である辻さんの直下で始まりました。社員全員がAIを理解して「使えている状態」をとにかく速く作ることを重視してきました。

その結果、現在ではかなりAI活用が浸透しています。業務でのAI利用頻度は、直近の調査でAIに馴染みのないビジネス職のメンバーも含めて「毎日使っている」人が40%、「週2~3回活用」までに含めると60%まで増えてきています。

――社内浸透のために、どんな施策を行ってきたのでしょうか。

工藤:まずは「MF AIチャット」というマネーフォワード独自のチャットツールを、社員が誰でも使える環境でリリースしました。また、データの取り扱いのガイドラインも同時に作成しました。

「MF AIチャット」の画面

ChatGPTを業務に使いたいと思っても、「このデータは読み込ませていいんだっけ」と迷ってしまい、尻込みしてしまうことがあります。まずは業務内でAIに気軽に触れられる機会をつくることが、環境整備の大きな一歩でした。

最初のステップを作った後は、学習リテラシーの向上とAI活用の文化醸成に力をいれました。大きく4つの施策を実践しました。

一つ目は、社内のAIコミュニティの運営です。Slack上でAI活用のナレッジを共有したり、われわれが相談を受けてそれに答える形で活用法を教示したりしています。

二つ目に、「MF AI Session」という誰でも参加できる社内イベントを四半期に1回開催しています。ここでは、AIに特化した最新の情報を発信するほか、現場からボトムアップで出てきた業務でのAI活用ナレッジを共有しています。

三つ目は、AI勉強会の企画・運営です。実際に現場でうまくAIを活用している社員に登壇してもらうことで、社内のAI活用の機運をリードしてほしいという思いがあるので、現場社員からの発信を重視しています。また、職種別の勉強会も月1~2回程度実施しています。

四つ目は「MirAIフェス」で、これは社内のAI企画コンテストで、今年の9月に初めて実施しました。全社員応募可能なアイデアコンテストで、予想を上回る500件以上の応募があり、私も驚きました。優秀なアイデアにはプロダクト賞、アイデア賞、ナレッジ賞といった3つの賞を授与して、大いに盛り上がりました。

MirAIフェスでの一コマ

――かなり文化醸成が進んでいますね。生産性の向上という意味で、特徴的なAIの活用事例はありますか?

工藤:分かりやすいところで言えば、議事録の作成業務の効率化の事例があります。

これには「Scribe」という内製のAIツールが活用されています。Zoomミーティングの録画をアップするだけで、決まった議事録のテンプレートで議事録が生成されるというものです。

また、フィールドセールスの商談メモ作成もAIを活用して効率化が進んでいます。普段使っているSalesforceから1~2クリックするだけで商談メモを生成できるという仕組みを構築しました。こちらは先述の議事録ツールではなく、あくまで普段フィールドセールスが使っている「Salesforceの画面から」実行できることがポイントです。

この仕組みを導入した部署では案件の50~60%の商談メモ作成を自動化したと言い、大きなインパクトにつながっています。

――社内のAI活用推進において大事なポイントはどんなところだと考えていますか?

工藤:ユーザー向けのサービスでもそうですが、UXが重要です。まずは使ってもらうこと。使われなければ、AIの活用に必要なデータも蓄積できないからです。

営業の商談情報や、社内の会議の議事録といったデータは、これまで暗黙知になっていてデータ化されていなかったものです。また、これまではデータを集めても手に余っていた業務に関しても、今はAIが上手くアウトプットしてくれます。AIの発達によって、社内のあらゆるデータを扱えるようになったわけです。

なので、あらゆるデータを貯めるためにも、AIを活用して生産性を上げるためにも、いかに簡単に使ってもらえるかが重要だと考えています。

――使いやすさによってハードルを下げることは大事ですね。一定の文化醸成が進んだ今、これから予定している取り組みはありますか?

工藤:全社員に向けて、学習リテラシー向上のためのeラーニング講座を提供し始めました。

また、AIをどう業務に活用するか「教えられる」レベルの人材を育てるために、AI推進リーダーを各部署から合わせて70名任命しました。要はその業務領域におけるAI活用のお手本になる方をまずは育てようという目的です。この方々には、自主学習のeラーニングの他に研修などプラスアルファの機会を提供していく予定です。

執行役員 AI活用推進担当、AI推進室副室長 工藤 裕之

マネーフォワードが提供するAIプロダクト

――マネーフォワードでは、プロダクトへのAI実装も進んでいますよね。

野村:すでにいくつかローンチされています。

例えば「マネーフォワード クラウド会計 for GPT」。財務諸表を分析し、従来ファイナンシャルアナリストが提案するようなレポートを自動で生成してくれるサービスです。

また、『マネーフォワード クラウド人事管理』というサービスの中で、雇用契約書をテンプレートから自動生成・提案する機能を提供しています。『マネーフォワード クラウド契約』というサービスでは、AI-OCR(画像から文字列を読み取ってデジタルなテキストに変換する技術)を用いて契約書から必要項目を読み取り、手続きをクラウド上で済ませられるようになりました。

マネーフォワードでは、AIプロダクトのビジョンとして「オートノマスバックオフィスの実現」を掲げています。「オートノマス」とは「自律的」という意味で、自動化の先の概念だと言えます。自動化が、「人間がやっていた作業を、一定のルールに従ってコンピュータが代替する」ことであるのに対し、オートノマスはより能動的にオペレーションを進めてくれるイメージです。

例えば、資金調達の時期に、調整や交渉の進捗をリマインドして、最も効果的な方法を提案し、最終的な資金調達の成功にまで導いてくれる。そういったAIサービスを想定しています。

マネーフォワードでは、こうした自律的なAIプロダクトを順次開発していて、来年以降さらに力を入れていく予定です。

――「自律的」なAIプロダクトは、これからのユーザーに求められるAIのあり方ということでしょうか?

野村:そうですね。先進技術への感度の高いお客様からは「こういうことは実現できないの?」といった相談を受けることがあります。先ほど紹介したサービスも、そういったお客様の要望にこたえる形で生まれてきました。

一方で、「オートノマスバックオフィス」を実現しているサービスはまだ世の中に存在しない、ある意味ユーザーの皆さまの想像を超えるサービスだと思います。なので、将来のバックオフィスはこうあるべきといった、ビジョンから作ることも重要です。

――なるほど。最後に、AIをプロダクトに実装する際に、意識していることを教えてください!

野村:AIを組み込んだプロダクトに限らず、そのプロダクトが本当にお客さまの健全な成長につながっているかどうかが重要です。マネーフォワードのバリューの中に「ユーザーフォーカス」があります。ユーザーフォーカスでサービスを設計をすることは、われわれのプロダクト開発の根幹にある一番重要なポイントです。

ですから、AIプロダクトを作る際にも、その機能やUXの一つひとつにおいてユーザーフォーカスを目指しています。

―― ありがとうございました。

あとがき

このnoteでは、キーパーソンとなるお二人に、マネーフォワードのデータとAIの活用について詳しく聞きました。マネーフォワードでは大きく分けて、社内のAI活用推進とプロダクトへのAI実装という2つの動きがありますが、それぞれ中では数多くのプロジェクトが存在しています。

そんな、数多くのプロジェクトで共通しているのは「ユーザーフォーカス」でした。プロダクトはユーザーが、社内のAI活用推進は社内メンバーが、どうしたらAIでより便利になるかが大事なポイントになっています。技術が進化しても、変わらない軸があることに、いち従業員として嬉しくなりました。今後も、データとAIの力を活かし、ユーザーの皆さまの生活やビジネスをより便利にするための挑戦を続けてまいります。

引き続き、マネーフォワードのAIの取り組みにご期待ください!

最後に

マネーフォワードでは、一緒に働いてくださる仲間を募集しています。
このnoteを読んで興味を持ってくださった方は、お気軽にご連絡ください!


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