ブレずに進化し続ける。BASEとマネーフォワードの「前向きの源泉」
起業の同級生、年の差を超えたソウルメイトが振り返る10年
鶴岡裕太氏(以下、鶴岡): 辻さん、お久しぶりです!(笑)
辻庸介(以下、辻): 久しぶり!、、っていうか、昨日も一緒だったでしょ(笑)。じつは昨日まで一泊二日で京都に行ってきたんですよ。
鶴岡:旅行先でタクシーの運転手さんに「名前を忘れてしまったのですが、お金が貯まる神社に行きたいんです」と道を聞いたら、「そんなんだから金が貯まらんのや」って説教されてしまって(笑)。
辻:他力本願になる前に、社会に還元しろと言われたよね、、笑
鶴岡:そうなんです。深く反省しました(笑)。
つかみからすでにお二人がどれだけ仲良しなのかが伝わってきました(笑)。そもそもいつ頃からの知り合いなんですか?
鶴岡:起業した頃からです。一緒のビジネスコンテストに出てたことがきっかけで仲良くなりました。そこそこ年齢は離れているんですが、辻さんとは馬が合うんですよね。
辻:いまおいくつでしたっけ?
鶴岡:32歳。お会いした頃は22歳でしたね。10年前の辻さんはいくつでした?
辻:36歳ですね。ってことは、今でもあのときの僕より若いのか。。
鶴岡:そうですね。ほとんど年齢差を感じないですけど(笑)。辻さんは京大を出てMBAを取得し、ソニー、マネックス証券を経て起業。キャリアだけを見たらエリート中のエリートで、成功を約束されているような人じゃないですか。かたやこっちは学生起業で右も左もわからない。それなのに辻さんは当時もいまも若い世代へのリスペクトを欠かさないんです。当時、学生起業でペーペーの僕にもフランクに話しかけてくれて、嬉しかったのを覚えています。
辻:僕は基本的に、年齢で区切ってお付き合いする考え方はありません。鶴岡さんとは価値観や本質的な物事の捉え方が共通しているし、リスペクトする部分も多い。世代が違うと見ているところも違ってくるので、いろんな意見を参考にさせてもらっています。
今回はマネーフォワード10周年の記念企画なのですが、BASEも同じく10周年を迎えました。お互いのビジネスモデルや成長をどのように見てきましたか。
辻:僕から見たBASEの印象はプロダクトを作る、モノづくりの会社のイメージです。鶴岡さん自身エンジニアで、自分でコードを書きますし。起業のきっかけも“自分の母親が簡単にお店を開けるWebサービス”を目指したもの。徹底したユーザー目線が根底にあると思います。
もう1つ、長期的視点でビジネスを進めている点が魅力です。明確なビジョンがあるからブレないし、実現する時間も沢山ある。いま32歳ということは、鶴岡さんが「あと30年は社長をやります」と言ってもおかしくないわけですから。もちろんそれは、会社にしがみつくという話ではなく、BASEの価値観をしっかりと築くために時間をかけるということ。どうすれば社会へ貢献できるかを常に考えているし、社員もその考えに共感した人たちが集まっている、そんな印象を受けます。
鶴岡:僕からすれば、マネーフォワードもかなりプロダクトを追求していると思います。これまでに何百回も一緒に飲みましたけど、基本的に辻さんはプロダクトの話しかしないんです。
先ほどもお伝えしましたが、キャリア的にはプロダクト側の人ではないはずなんです。ビジネス側で相当高いスキルとアセットを持っているにもかかわらず、マネーフォワードを立ち上げてからの10年間、ずっとプロダクトを意識している。僕らの世代はエンジニア中心でプロダクト中心のスタートアップが多いし、逆に辻さん世代だとビジネス寄りの人たちばかりが集まっている場合もある。ところがマネーフォワードはプロダクトに全力でコミットした結果、ビジネスもプロダクトも強くなった。企業として非常にバランスが取れているなと感じます。
辻:そう見てくださっているのは嬉しいですね。僕らはワンルームマンションからスタートして、最初の数年間はプロダクトが成功しなければすべてが終わる体験をしてきました。正直、プロダクトを作るのは本当に難しい。一方、大変だからこそやりがいがあるし、面白い。スティーブ・ジョブズが生み出したMacやiPhoneのように僕らもユーザーに感動を届けられるプロダクトを作りたいんです。
昨日も歩きながら「起業するのは簡単だけど、10年続けるのは大変だよね」という話を鶴岡さんとしていました。スピード感を持って事業を軌道に載せるのも大変ですが、10年間ずっとブレずにやり続けるのは想像以上にもっと大変です。テクノロジーもどんどん進化するし、ここ数年のように想定外の社会環境の変化もあります。でもBASEは当初からブレていない。言っていることも10年前から変わらないですし。
鶴岡:マネーフォワードもBASEも、プロダクトが1〜2年で完成するものではなく、ユーザーニーズに伴って何十年もアップデートし続けなくてはなりません。社会を良くしたい、世の中に価値を還元したいとの思いがあるからこそ、ロングタームで粘れるし、頑張ることができると考えています。
辻:一緒に行った旅行先で見た苔寺は1300年の歴史があって、京都の店は100年営んでも老舗とは言われない。僕らも粘り強く続けていきたいですよね。
徹底したユーザー目線が良質なプロダクト開発の原動力に
付き合いが長いだけあって、お互いをよく見ていらっしゃいますね。
鶴岡:辻さんがすごいのは、小規模な個人店にご飯を食べに行ったときにユーザーインタビューをするところ。オーナーさんに「会計でお困りごとないですか?」って聞くんですよ。未だにあれを普通にできるのは素晴らしい。
辻:別にマネーフォワードを売り込みたいわけではなく、リアルなユーザーさんの声を聞くのが興味深いんです。当たり前ですが、ユーザーさんは十人十色。僕らが社内で話している想定ユーザー像とは異なる面もたくさんありますから。それは会議室で話しているだけではわからないので、街に出たときに積極的にヒアリングすることを心がけています。
鶴岡:現実社会で自分たちのサービスを使ってくれているユーザーさんと出会うと感動しますよね。今回の京都旅行ではないんですが、以前、辻さんと京都に行ったときに話しかけてきた若者がBASEを利用していたのには驚きました。
それはBASEの鶴岡さんと認識して話しかけてきたのですか?
鶴岡:いや、まったく知らなかったらしいです。辻さんと鴨川沿いに座っているときに、ある若者が「夢、話してもいいですか?」と近寄ってきて。聞いてみると、ネットショップ作成サービス「BASE」を使ってネットショップを開いていて、いろんなことにチャレンジしていきたいと語ってくれたんです。その一方で、辻さんと一緒に入ったお店でマネーフォワードを利用しているオーナーさんがいたり。そんなこと、10年前には夢にも思いませんでした。
辻:最近では首都圏に限らず、地方で利用してくれているユーザーさんも増えてきました。嬉しいと思う半面、緊張感もあります。プロダクトを届ける側は提供者目線になってしまいがちです。「社内のリソースが足りないから、ご希望の機能は追加できません」と言ったところで、ユーザーさんにとっては関係のない話ですよね。なのでユーザーさん中心の視点を絶対に忘れないように、社内でも口酸っぱく言い続けています。私たちが行動指針(Value)の1つに「User Focus」を掲げているのはそのためです。
鶴岡:ユーザーさんに喜んでほしい、満足してほしいという思いはBASEも共通してます。創業時に痛感した、1人のユーザーさんに利用していただく難しさは今でも忘れません。だからこそユーザーになって頂いた方を後悔させたくないし、期待を上回るプロダクトを作り続けていきたい。そして「『BASE』を使って人生がハッピーになりました」と言ってもらいたい。ユーザーさんの存在は最初から僕たちの原動力になっています。
困難なときでも「戻ってこれる場所」があれば何とかなる
ちなみに、この10年間で最も大変だった経験は何ですか?
鶴岡:やはりコロナ禍の影響は大きかったです。2020年は、過去8年分の成長を1年で達成するほどの規模でサービスの需要がありました。すごく必要としてくださっていることを実感する一方、アクセス数の急増で一時サービスが利用できない状態に陥ってしまったんです。何が悔しかったかと言えば、せっかくユーザーさんがECビジネスを立ち上げて商売を始めようとしているのに、機会損失を与えてしまったこと。あのときは本当にきつかったですね。夜中の1時から経営会議を開いたりして。辻さんはいかがですか。
辻:会社が軌道に乗った後の話で言うと「マネーフォワード ME」のWebブラウザ版のUIを変更したとき。従来と異なる操作感にはなるのである程度のクレームがあることは予想していましたが、ユーザーさんからの不満の声が予想をはるかに超えた数届いてしまい、すぐ元のバージョンに戻しました。社内で開発してくれたメンバーにも申し訳なかったですし、ユーザーさんに迷惑をかけるのは本当にしんどいです。
そうした難しい状況でも組織やチームが前向きであり続けるための秘訣、モットーを教えてください。
辻:しんどいときこそ、リーダーの一挙手一投足が注目されるじゃないですか。リーダーがブレると組織全体が揺らいでしまいますから。なので僕は船長として、嵐のときでも帆を張る姿勢を見せるようにしています。仮に沈没しそうになっても最後まで逃げない。それがまず1つ。
2つ目は明るく常に発信し続けること。積極的にコミュニケーションを取っていれば、必ずフィードバックや学びがあり、活路がどんどん広がります。
3つ目はチームで経営すること。いま、マネーフォワードにはグループ全体で1900人ほどの社員がいて40以上のプロダクトがあります。この規模になると自分で全て直接確認するのは無理です。幸いなことに僕より優秀なメンバーがたくさん入社してくれています。ですから僕の立場では、優れた人材を数多く獲得して環境を整備することが、ユーザーさんに価値を届ける1番の早道。しっかりとノウハウを共有すればチームで盤石な組織を作れるので、なんでも1人でやろうとしないことを意識しています。
鶴岡:基本的には辻さんと似ています。自分が不安なときは自分だけで抱え込んでも答えがない状態なので、不安を解消するために徹底的に情報を集めてチーム全体でディスカッションして解決策を導いています。
それから、つらいときこそ「BASEが提供できる価値とは何か」を社員全員にきちんと話すようにしています。もちろん短期的な浮き沈みはありますが、つらい日も良い日も飲み込んでロングタームでブレずに歩み続けることが大事。あくまで自分たちで掲げたミッションやバリューを達成するために事業を頑張っているわけですから。
原点に帰る、ということでしょうか。
辻:そうでしょうね。マネーフォワードでは迷ったら3つのバリュー、「User Focus」「Technology Driven」「Fairness」に立ち返るようにしています。それに加えて、「Speed」「Pride」「Teamwork」「Respect」「Fun」という、全員が大切にするカルチャーも重要です。戻ってこれる場所をみんなで共有している。
社会性の追求は不可避、持続可能であり続けるためになすべきこと
最後に教えてください。持続可能性を保ちながら、社会と一緒に「もっと前へ」前進し続けるために必要なこととは?
鶴岡:これからの起業家には、ソーシャルインパクトが求められると思います。兆単位の売上があっても環境保全に取り組まない企業は市場にも消費者にも歓迎されません。東証プライム市場が顕著なように、利益と社会性の両輪がそろっていないと評価されない時代が現実のものになりました。
BASEの根底には、より受容的で多様性のある社会を実現したいとの願いがあります。例えば、いままでハンデだったことが特技に変わったり、諦めていた生き方を選択できるようになったりなど、“生きたいように生きることができる社会”こそがあるべき姿だと思っています。
10年前と比較すると、ユーザーさんのライフスタイルが多様化して、明らかに価値観がアップデートされていることを肌で感じています。それは資本市場も同じです。常に社会が求めているものをキャッチアップして、期待に応えられるようにBASEも進化していきます。
辻:今マネーフォワードが提供しているサービスには、もっとユーザーさんに高い価値を提供できるポテンシャルがあります。例えば「マネーフォワード ME」を使っているユーザーさんは平均で2万円ほど貯蓄額が増えています。これを中長期の視点で見ると資産が100万円単位で増えることになり「お金の見える化」のみならず、人生の選択肢を広げる提案ができますよね。
また、法人のユーザーさんに向けては、マネーフォワードのプロダクトによる資金繰りの改善で更なる成長に寄与し、その貢献した数値を可視化することもできるはず。こういった抽象的な可能性を、どう具体的な形に落とし込んでユーザーさんに価値を届けるか。引き続き挑み続けたいと思います。
持続可能性の観点では、ユーザーさんの人生を前進させる「User Forward」、社員の可能性を前進させる「Talent Forward」、社会そのものを前進させる「Society Forward」の3本柱を設定しています。この3つに関しても、具体的な価値や数値目標を設定していくつもりです。
鶴岡:これからも頑張りましょう!またすぐ食事誘いますね!笑
辻:楽しみにしてます!笑 本日はありがとうございました。
10年前からソーシャルインパクトを見据え、ブレずに前進してきた両社。
沢山の仲間と共に、ユーザーさんを、そして社会を前へ進めるべくこれからも前進していきます。
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