企業文化を深め、共創して高めあう。 横浜F・マリノスとマネーフォワードの「前向きの源泉」
互いに惹かれあっていた目指すべき姿
永井 紘氏(以下、永井):
対談に入る前に、絶好の機会なので言わせてください。私、「マネーフォワード ME」のユーザーなんです。以前は別の家計簿アプリを使っていましたが、トップパートナーになっていただいたのを機に乗り換えました。日々の家計だけでなく、積立なども管理できるので役立っています。
金井 恵子(以下、金井):
知らなかった、、!(笑) ありがとうございます!
今回の対談では、両社に共通する想いを中心に聞いていきたいと思います。2021年12月、F・マリノスでは新しいフィロソフィーを発表しました。このタイミングでクラブ理念をリニューアルしようと思ったきっかけは。
永井:
2022年、F・マリノスは創設30周年を迎えました。30周年を前に社内からやってみたい事業を募ったところ、5つほどの部署から「クラブ理念の再確認」の意見が寄せられ、それがフィロソフィーの策定につながりました。
策定に取りかかったのは2021年の夏頃からです。私がプロジェクトを束ねる形で進めてきましたが、専門家ではないので何から始めればいいのか右も左もわからない。
そこで参考にしたのがマネーフォワードでした。通常、企業の理念は発表したら終わりじゃないですか。でもマネーフォワードはTwitterやnoteを通じて継続して意識的にミッションやバリューを発信されていて。中でもその作り方についての記事は学びになりました。
金井:
それはうれしいですね。私たちもF・マリノスの持つ姿勢、カルチャーに惹かれてパートナーシップを締結した背景があるのでなおさらです。それだけに、参考にしていただいたことはお互いの想いが近いことの裏付けになったような気がします。
具体的にどこに惹かれていたのですか。
金井:
クリーンなのに攻撃的で、最後まで守りに入らないサッカースタイルに共感を覚えました。その点はマネーフォワードの持つベンチャースピリットと相通ずるものがあります。そうした強さに加えて、温かさを大事にしている。
選手だけで戦っているのではなく、ファン、サポーター、パートナー、ホームタウンなどF・マリノスの活動に関わるすべての人たちを含めての“F・マリノスファミリー”であり、それはマネーフォワードが目指す世界観と似ています。人に寄り添い、共に創るカルチャーが近いなと。
だから2022年1月の新体制発表会で新フィロソフィーを見て感動し、思わず会場から永井さんにメッセージを送ったほどです。
永井:
そうでしたね(笑)。実は策定の当初、金井さんにすこしアドバイスをもらったことがあります。どうやってプロジェクトメンバーを集めるべきか悩んでいたからです。過去の経験から、外部の方に頼ったり、限られたメンバーだけで決めたりしても全体に浸透しないことはわかっていました。マネーフォワードは自分たちで考えて行動指針(MVVC)を作っていましたから、ぜひ意見を聞きたかった。
金井さんからは「プロジェクト側で選ぶのではなく、有志を集めるのがいい」との意見をいただいて、まさしくその通りだと思いました。そこで全社アンケートを取り、最後に自由記述欄を設けたところ、総務部、コーチ、強化部など立場にかかわらず「このクラブをもっと良くしたい」との熱量を持っている人たちが数多くいました。その中で「一緒に策定を手伝いたい」と自主的に手を挙げてくれたメンバーが中心となって策定に着手しました。
その後メンバーと、1対1でじっくりと対話しました。その時間がとても面白くて。クラブのコーチやアカデミーコーチにはほかのクラブを経験された方も多く、別の視点から「F・マリノスってここが良いよね」と話してくれました。私がまったく気づいていなかった点を指摘されたこともあります。策定のプロセスで自分自身の“F・マリノス愛”を再確認したと言っても過言ではないかもしれません。
金井:
私もMVVCを推進する過程で「マネーフォワードにはこんな魅力があるのか!」と感じた瞬間が多々ありますし、それが自分自身がマネーフォワードを改めて好きになるきっかけになりました。
10年前、わずか6人で始まった当社は、今では1600人を超える大所帯に成長しました。今でも皆で一丸となれているのはこのMVVCから育まれた企業文化が根付いているからだと考えています。
カルチャーは唱和する社是のように強制しても機能しません。私はVPoCとして、マネーフォワードらしさや魅力をMVVCやカルチャーになぞらえて社内に発信し続けることで共感を育み、この会社で働いて良かったと思ってもらえるよう日々活動をしています。この活動にいわゆる“銀の弾丸”はないので、今も地道に泥臭く伝え続けています。
理想はアカデミーの子どもたちまでフィロソフィーが浸透すること
マネーフォワードでは半期に一度、「Culture Hero」という独自制度で選ばれた社員を表彰しているそうですね。
金井:
はい。「Speed」「Pride」「Teamwork」「Respect」「Fun」の項目でCultureを体現した社員を表彰しています。例えば「Speed」の受賞者には、「どのようにしてSpeedを体現しているか」をほかの社員の前で話してもらいます。その理由は、現場のメンバーが自分の言葉で語ることを重視しているからです。
言語化することでメンバーが会社のカルチャーをどの様に解釈し、日々の活動に生かしているのかを深い共感を伴って理解できるようになります。この他にも並行して、カルチャーの共感と体現を促す取り組みを様々な切り口で進めています
マネーフォワードは社員の皆さんがSNSなどでカルチャーについて発信していることも印象に残っています。
金井:
もともと、それぞれが発信しやすい風通しの良さもあったと思います。しかし、いろんな施策を展開してきたことで、今では社員それぞれに想いが染み出すようになってきました。「発信してください」と口酸っぱく言わなくても、自らが発信する土壌ができたと感じています。
永井:
パートナーになっていただいたとき、マネーフォワード社員の皆さんが社名入りで次々とTwitterで発信してくれたことには驚きました。社名入りで堂々と発信することを規制するケースも多いですから。しかも「F・マリノスとパートナーになった!」「観戦したらすごく楽しかった」とポジティブな投稿がほとんどで、非常にうれしかったのを覚えています。明るくて若さがあり、みんなが同じ方向を向いている印象があります。
金井:
実はマネーフォワードのパートナーシップ担当者は、社員がチームを応援する姿やF・マリノスに対するSNSの発信を通じて会社のカルチャーに共感し、入社してくれたんです。
本音を明かせば、締結当初はどのように関わっていくべきか手探りの部分もありましたが、F・マリノスの魅力を知るうちに“ファミリー”というカルチャーを軸にしたアクティベーション(活性化)をしたいと考えるようになりました。自分たちがカルチャーを重んじている企業だからこそ、想いが重なってくる。その点は常に意識しています。
話を伺っていると、カルチャーの醸成がいかに重要かが伝わってきます。
永井:
新フィロソフィーを発表以来、F・マリノスの企業文化も徐々に変わってきました。明文化したことで背骨となる指針ができ、一本筋が通った気がします。黒澤良二社長などの幹部も各方面でビジョンを広めていますし、何より、プロジェクトメンバーを中心に、自発的に発信する方が増えた。日常でも「そのやり方はF・マリノスが目指す文脈とは違う」と言うこともしばしばあります。
金井:
新横浜駅に掲出したパタパタ順位表もその効果ではないですか?
斬新なアイデアで、掲出に至るまでの意思決定がフィロソフィーに則っていたと聞きました。
永井:
おっしゃる通りです。ホームタウンである横浜エリアでは、京急線で長く親しまれた「パタパタ発車案内 装置」が 2022 年に引退となって話題になったこともあり、ファン・サポーターの方々に懐かしく楽しんでいただけると考え、かつて駅の案内表示に使用されていた反転フラップ式表示装置を採用しました。
前回優勝した2019年は手書きで順位を更新していて、それはそれで評判が良かった。しかし成功が見えている方法ではなく、少しでも前進してより良い方法にチャレンジしたいとのことで掲出に携わるメンバーの意見が一致しました。事前にすり合わせたわけではなく、自然と同じ方向を向いていたんです。そのときにクラブが大事にしているコアの部分を共有できていることを再認識しました。
フィロソフィーをあえて新体制発表会で外部に向けて発表したのは、「F・マリノスはこれで行くんだ」と覚悟を決めるためでもあります。クラブが大事にしているビジョンに共感してくださる外部の方々こそ、我々にとってのファミリーです。あるアカデミーコーチは「理想はアカデミーに通っている子どもたちにまで理念が浸透すること」と話していました。これからもプロジェクトを継続し、アカデミーの子どもたち等を含めたF・マリノス全体に浸透していければと思います。
金井:
フィロソフィーの「MISSION」には“喜怒哀楽”の言葉が採用されていますが、マネーフォワードもスタジアムのLED看板に「喜怒哀楽」を絡めたメッセージを入れました。
普通なら「家計管理はマネーフォワード」と打つところをそうしなかったのは、「私たちもファミリーを体現するパートナーでありたい」と決意表明をしたかったからです。
サッカー無関心の人間を巻き込んだスタジアムの“ファミリー感”
Jリーグが発足してから来年で30周年を迎えます。今や日本代表は毎回のようにW杯に出場するなどサッカーを取り巻く環境は様変わりしました。
永井さんは新卒入社でF・マリノス一筋だそうですが、時代の変遷をどのように捉えていますか。
永井:
直近ではやはり、新型コロナの影響が大きかったですね。でもこの2年間で未来を見据えて準備してきたことが結果に出ているのが2022年シーズンだと思います。
「コロナだから仕方がない」と理由をつけてチャレンジしないのは簡単ですが、極めて難しい状況だからこそ、事業部のメンバーはコロナが落ち着いたときにどんな価値を提供できるかをずっと考えてきました。その根底にもフィロソフィーが宿っています。
「スタジアムならではの価値は何か」を追求して辿り着いた空間音響の演出
マネーフォワードがパートナーになったのは2020年10月。
最もコロナが厳しい時期でした。
金井:
代表の辻は大のサッカー好き。もともとスポーツの持つ一体感、ポジティブな力を信じていましたし、F・マリノスのアタッキングフットボールの哲学に共感したからこそ応援しようと決めたと話しています。
一方の私はまったくサッカーに興味がなかった人間。ところが一度スタジアムを訪れて生観戦してすっかりはまってしまいました。サッカーの試合そのものというより、スタジアムの雰囲気、そして包むこむようなファミリー感に感銘を受けたのです。
サポーターが「新しい家族、マネーフォワードと共にもっと前へ」という横断幕を掲げてくれたことは今でも忘れません。
永井:
当時は社員が集まる機会がほとんどなく、金井さんは「スタジアムに集まること自体が価値だ」と発信されていましたよね。あの投稿を見て、F・マリノスが持つ価値とは何かを改めて考えさせられました。
金井:
今でも社内観戦のチケットは人気で、ほぼ毎回定員になりますね。一度観戦に訪れて、次は家族や親戚、同じ部署の同僚を連れてくるなど輪が広がっています。
永井:
そうやって、あまり興味がなかった人たちがどんどんスタジアムに足を運んでくれるのはとてもありがたい。我々の仕事はスタジアムにご来場いただいて終わりではなく、どんな価値が提供できて、どうすれば夢中になってくれるかを考えること。ファミリーの雰囲気やF・マリノスの価値観に共感してもらえるパートナーのルートがあることは、F・マリノスにとっても重要なことです。
そう思うと、事業部とチームが共通の理念に則って行動することが本当に大事になってきます。フィロソフィーに共感して試合を観に来たのに、チームが理念とまったく違うサッカーをしていたら幻滅してしまいます。
フィロソフィーを発表する際には、選手を代表してキャプテンの喜田拓也選手に主旨を説明し、選手から見て違和感がないかを確認してもらいました。理念が分断していないところがF・マリノスの強さだと自負しています。
金井:
フィロソフィーのムービーが、喜田選手の言葉から始まっていたのが印象に残ってます!
これからも「もっと前へ」と進み続けるために
マネーフォワードでは現在、「さあ、人生をもっと前へ。」をコンセプトに創業10周年企画を展開しています。最後に、ご自身の歩みをこれからも「もっと前へ」進めるために、大切にしたい信念を教えてください。
永井:
フィロソフィーの策定を通じて学んだのは、誰かに頼る姿勢では何も進まないということです。それがフィロソフィーの中に「リーダーシップ」を入れた意図でもあります。
個人が自分ごととして捉えて自分で変えていく。F・マリノスのように内側から良いクラブにしたいと思う人たちがいれば、主体性は生まれてくるに違いない。そう感じています。
金井:
全社で取り組まないとカルチャーは成熟しません。「自分たちがありたい姿」に向かって一生懸命取り組んでいると、共感してくれる人たちが集まってくる。
Culture Heroのように各部署にマネーフォワードイズムを体現しているメンバーがいるので、様々なプロジェクトを通じて浸透の輪が広がっていきます。それは活動を始めてからの6年ほどで実感しています。その延長線上でF・マリノスとも惹かれあってパートナーになることができました。
正解が見えなかったとしても信じて突き進むことが、きっと結果につながるはずです。
全く違う業種でありながら、組織やチームの持つカルチャーを介してお互いを刺激し、高め合うパートナー。これからもマネーフォワードはF・マリノスと共にもっと前へ、歩みを進め続けます!
マネーフォワード10周年サイトには、これまでの歩みと共に弊社のカルチャーを感じられるコンテンツを展開しています。あわせてぜひご覧ください!