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「いつのまにか貯金」「ボタン1つで支払い処理」という便利な世の中へ~設立1周年を迎えた ”Money Forward Lab” の「これまで」と「これから」~

 データの利活用によりお金に関する不安や課題の解決を目指すMoney Forward Lab(以下、Lab)が、設立から1周年を迎えました!新たな技術顧問として慶應義塾大学の星野教授が就任し、5月21日には設立1周年発表会も実施しましたので、改めてこの1年でどのような研究をしてきたか、また今後の展望などについてお伝えします。

「わかっちゃいるけど貯められない」悩み解決のため、今後「ナッジ」を活用

 例えば「お金の大切さは知っているけど貯められない」といった悩みを抱える個人や、「制度変更に対応すべきだけど本業が忙しい」といった課題を抱える企業は多いのではないでしょうか。そうした悩みや課題に対して、今後Labは、行動経済学を専門とする星野教授の知見をもとに、もっとも適切な行動を選択するためのタイミングや働きかけの方法などを研究していきたいと考えています。
 欧米だけでなく近年日本でも注目されている「ナッジ」(望ましい行動を自発的に選択するよう促す手法)を活用して、「より良い家計・企業経営」や、「企業の取引コストの最小化」の実現を目指します。 

技術顧問星野先生

(発表会での星野教授の就任ご挨拶)

「いつのまにかお金がたまる」「ボタン1つで支払い処理ができる」お金に関する不安や課題の解決を目指した研究

Labは「お金のメカニズムを解き明かすことで、人生に笑顔と驚きを。」をミッションとして、お金に関する不安や課題の解決を目指しています。

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 現代において電子化は浸透しつつありますが、依然として紙や手書きの領収書や請求書などは存在し、入力ミスや煩雑さといった課題があります。まずはこの課題を解決することで、お金に関するデータの正確性や連続性を担保し、ユーザーにとってより付加価値の高い機能や新サービスの創出につなげていきたいと考えています。そうした考えのもと、Labでは①データ入出力の煩わしさから解放、②お金の動きの少し先の未来を可視化、③金融行動を理解して適切に情報提供、を目的とした研究に取り組んできました。

 所長である北岸は、「領収書自動抽出」「手書き文字認識」「請求書構造分析」について研究しています。机の上に並べた領収書を動画で撮影して自動的に抽出する「領収書自動抽出」については現在、従来のスキャナー読み取りと比較して、電子化までの時間を半分に削減することを目標に研究しています。「手書き文字認識」については、文字列認識精度(注1)は96.6%、文字単位認識精度(注2)は99.2%を達成することができたそうです。試しに人間が大量の手書き領収書をタイピングしてみたところ、5%ほどのミスが生じたそうですので、タイピング時間や量、休憩時間等の諸条件によっては、人間よりもAIのほうが正確だと言えますね。

 北岸の研究により、紙の領収書や請求書を素早くデータとして読み込み、手書きの場合は日付や金額などを正確にデータ化し、さらに「請求書構造分析」で振込先の銀行や支店名、口座番号といった支払い処理などに必要な情報が自動的に抽出できるという、便利な世の中になりそうです!

 研究員の久井は、ユーザーの月間や年間での支出傾向を予測することで自発的な行動変容と習慣化を促す「消費予測」に取り組んでいます。近年、人生100年時代の到来や老後2000万円問題の議論などにより、キャリアや資産運用について自身で計画・管理する必要性が高まっていますが、「お金の見える化」は実現できても、実際には「気づいたら赤字になっていた」「どこをどう改善すればいいかわからない」など、うまくいかない場合も多くあります。そこで久井の研究を通じて、理想的なお金の管理方法を提案すべく、過去から未来までの時間軸でお金の状態を示すサービスを検討しています。 

 同じく研究員の森田は、「消費行動パターン検出」について研究中。なにが起こるかわからないときに、私たちのよりどころになる「貯金」。森田は現在、「使いすぎ量の可視化」と「その傾向の検知」に取り組み、さらにその原因となっている消費行動を知ることで、「貯金ができない」という悩みを幸福感と紐づけながら解決したいと考えています。

 個人のお金の悩みを解決するために、久井はマクロな視点から、森田はミクロな視点からのアプローチにより、ユーザーの行動変容を促していくというわけですね。

 20新卒の田中は、「記事レコメンデーション」について研究しています。今後『MONEY PLUS』内で、記事の推薦を通じて個々のユーザーが潜在的に求める情報を提供したいとのこと。これにより、行動変容のために自身が何をすれば良いかという情報を教えてくれるようになりそうです!

 一見バラバラに思えますが、「お金に関する不安や課題の解決を目指す」という目標のもと、すべての研究が繋がっています。これらの研究は一部完了しているものもありますが、具体的なサービスへの導入についてはまだこれから検討していく予定ですので、今後にぜひご期待ください!

Labの様子

(LabメンバーのMTGの様子。左上から順に右へ、森田、福井、兼田、田中、久井、北岸。なぜか全員背景が同じ)

 ところで、海上自衛隊、NTTを経て、Yahoo! JAPAN研究所の立ち上げをリードした北岸を筆頭に、金融機関でクレジットスコアリングモデルの開発などを担当していた久井、計算知能(人工知能研究の一分野)で優秀な若手論文発表者を表彰する賞を受賞した森田、この4月に新卒で入社したばかりなのにもう研究を開始している田中など、Labは個性あふれる経歴のメンバーが揃っています。
 直近5月に入社した兼田は、CERN(欧州原子核研究機構)で素粒子の研究をしていたそうです!!それぞれの際立った個性が、Labの研究にも役立っているのですね。

「無くては困る」「あるのが当たり前」の価値を提供していきたい

 最後に、所長の北岸に1年の振り返りと今後について、インタビューしました。

設立当初の北岸さん

(オフィスにて設立当時の北岸を撮影)

ー 1年を振り返って、いかがでしょうか?

この1年間は、Labのミッションやビジョンに共感してもらえる研究者の採用を第一に進めてきました。結果として、素晴らしい研究仲間が集まりました。それぞれが異なる専門領域で尖っていながらも、裾野では重なる領域もあるため、知識や経験などを相互補間できる、良い関係性になっていると思ってます。

ー この1年で苦労した点やエピソードがあれば教えてください。

採用と並行して進めたのが、「①データ入出力の煩わしさからの解放」への取り組みでした。何から進めようか悩んでいた時に、事業部門から「領収書等に書かれた手書き文字を何とかしたい」という要望が持ち込まれました。その要望を聞いて、データを整備しつつ事業課題も同時に解決できる、良いテーマだと思いました。ただ「私1人では実現は難しい」、そして「グローバル対応も見越しておきたい」という理由から、日本語を母国語としない外国籍の研究者たちとプロジェクトを編成しました。結果は上記で述べられている通り、文字認識精度は99.2%となり、満足できるものになったと考えています。

ー 改めて、Labの目指したい世界観や今後の展望について教えてください。

Labのミッション・ビジョンの実現に向けて研究者たちが積み上げたものが、結果としてLabの世界観を醸成するものだと思っています。この1年はコンピュータ・サイエンス領域に特化して進めてきましたが、今後は行動経済学やファイナンスの知見も高度に融合させながら進めていきたいと考えています。

ー 最後に、ユーザーや読者へのコメントをお願いいたします!

今は、奇をてらうような研究はやっていません。まずは「パワーウインドウ(注3)のような研究成果」を出せればいいなと思っています。知らない人も多いかもしれませんが、1980年代までは、ほとんどの自動車の窓は、内ドアについたハンドルを手でグルグル回して開閉していました。パワーウインドウを初めて見た時は、「これにお金払うぐらいなら手でいいじゃん」と思ったのですが、今ではほとんどの車で標準装備になっていて、わざわざハンドルに変更する人はいないですよね。最初はちょっとお節介に感じるかもしれないけど、いずれは無くては困る、あるのが当たり前の、パワーウインドウのような価値を今後提供できればと考えています。

 設立当時は北岸しかいなかったLabですが、おかげさまでこの1年間でメンバーも増え、研究内容もより充実したものになってきました。これからもお金に関する不安や課題の解決を目指して、研究に取り組んでいきます。

(注1)日付の場合は”2020年5月23日”すべて一致して正解とみなすもの
(注2)”2020年5月23日”の場合は”2””0””2””0””年”のように1文字単位で正誤を判定するもの
(注3)スイッチ操作により開閉できる自動車などの窓のこと



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