「API」が、生活を豊かにする?~『マネーフォワード ME』の連携基盤が、大きな節目を迎えました~
こんにちは。広報の石田です。
当社が提供する、お金の見える化サービス『マネーフォワード ME』は、銀行口座やクレジットカードを連携して、残高や入出金明細を一括管理できることが特長です。
その、サービスの根幹とも言える「連携基盤」が、先日、大きな「節目」を迎えました。
どんな「節目」を迎えたのか、今後どういう可能性があるのかなど、当社の連携基盤を支えるアカウントアグリゲーション本部の内波を中心に、話を聞きました。
■話者:
・内波 生一:アカウントアグリゲーション本部 本部長
(サービス連携基盤の開発責任を担う)
・神田 潤一:Money Forward X本部 執行役員
(日本銀行時代は、金融庁でFintech関連の調査・政策企画に従事。現在は、Fintech推進に向けて、金融庁や金融機関との折衝を行う)
・西方 夏子:PFM事業本部 副本部長 PM
(お金の見える化サービス『マネーフォワード ME』の開発責任を担う)
石田:それではよろしくお願いします!
内波さんは、普段からサービスの連携基盤を支えられているかと思いますが、いつごろから携わっているのでしょうか?
内波:2014年に入社してからずっとですね。入社する前に、『マネーフォワード ME』で初めて銀行口座を連携をしたときに「あ、すごいな」と思ったんです。それが入社したきっかけのひとつでもあります。
石田:そうなんですね。今、『マネーフォワード ME』には、2,600個以上の金融関連サービスを連携できますが、どのように連携サービスを増やしてきたのでしょうか?
内波:基本はユーザーからの要望をもとに、平均週1回のペースで一つ一つ増やしています。あとは、エンジニアが個人で利用しているサービスで、『マネーフォワード ME』で管理したいと思ったものを、自由に連携している感じですね。
石田:金融以外でも色々なサービスを連携できますよね。今後も増やしていくのでしょうか?
内波:はい、増やしていきます。特に「キャッシュレス決済」などの新しい決済手段や、「保険」などの支出・収入に限らず、お金の情報を持っているところと連携を進めていきたいと思っています。
石田:お金の見える化が、よりしやすくなりますね。
内波:そうですね。この「連携基盤」は、当社のサービスの根幹となる部分ですが、2020年5月末に大きな「節目」を迎えました。
石田:「節目」とは、何でしょうか?
内波:ここは神田さんから説明いただいた方がいいかもしれません。
神田:はい。これまで、我々のような「家計簿アプリ」や「クラウド型会計ソフト」を提供する企業は、ユーザーからネットバンキングのログインIDとパスワードを預かり、そのユーザーの代わりにログインし、口座の情報を取得していました。これを「スクリーン・スクレイピング」(以下「スクレイピング」)と言います。
2015年頃から、国内で徐々にFintechが広がり始めたということもあり、金融庁が「消費者が安心してFintechサービスを利用できるよう、整備しましょう」といって、2017年に銀行法を改正しました。
改正後、よりセキュリティが高くユーザーが安心できるかたちでFintechを推進していくために、銀行口座を連携する場合はできるだけ「API連携※」に切り替える(スクレイピング継続の場合は契約を締結)という決まりになったんです。
※ API=アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略
「API連携」をするためには銀行と契約を結ぶ必要があり、その期限が2020年5月末でした。銀行との連携が継続できなければ、これまでと同じように「家計簿アプリ」や「クラウド型会計ソフト」を提供できなくなるので、当社にとって「創業以来の最大の危機」と言っても大袈裟ではない状況でした。
ユーザーに迷惑をかけないよう、5月末までに全ての口座連携を継続させることを目指し、社内の色々なメンバーが協力して、銀行とのAPI連携を進めてきました。
石田:連携を進める中で、新型コロナウイルスの影響はありましたか?
神田:はい。出社しないと契約締結できない銀行もあるので、金融庁が期限を2020年9月末に延長しました。しかし当社は、APIに切り替えた後、ユーザーのために金融機関と新たなサービスを考えていく体制を早く整えたかったので、5月末という目標は変えずに進めてきました。
(※API連携の取り組みについて、詳しくは神田のブログ「オープンAPIの取り組みを振り返って」をご覧ください。)
石田:なるほど。それは大きな節目でしたね。
そもそも、なぜ「API連携」するとセキュリティのレベルが上がるのでしょうか?
内波:銀行が開放するAPIに接続させるため、これまでのようにIDとパスワードを企業側で預かる必要がなくなります。当社は、スクレイピングの場合でも、ログイン情報を暗号化して万全なセキュリティ体制で管理していますが、利用者にとっては安心感が高まりますよね。
石田:確かに、ログイン情報を預けることに抵抗を感じる方でも、安心できますね。
内波:セキュリティ面以外でも、データ取得がより安定したり金融機関側のシステム負荷を軽減できるなど、API連携に切り替えることによって様々な課題を解決できます。
石田:色々良いことがあるんですね。
「スクレイピング」から「API」に切り替える時に、『マネーフォワード ME』のユーザー側で何か作業は必要ですか?
西方:順次、各銀行の連携を「API」に切り替えていますが、銀行ごとに再認証(銀行サイトにログインしてAPI接続を認可)をお願いしています。
石田:私自身も、某銀行の連携が一度切れて、銀行側のサイトで再ログインしましたが、あれがそのことだったんですね。
西方:そうです。その作業で、ユーザーにも少し手間をおかけしてしまっていると思います。
石田:『マネーフォワード ME』の銀行口座連携は、全て継続できることになったのでしょうか?
西方:結果として『マネーフォワード ME』では、ほぼ全ての銀行が連携を継続できることになりました。ただ、どうしても連携が切れてしまう銀行がいくつかありました…。ユーザーの方には、そのことをお知らせしなくてはいけないので「お知らせメール」を配信したんです。そしたら配信した後に、感動的な出来事が起きて…。
石田:感動的な出来事とは…?
西方:お知らせメールを見たユーザーが「マネーフォワードとの連携を継続してほしい」と、銀行へお願いをしてくれたんです。そして、その銀行とは連携を継続することができました。ほぼ全ての銀行と連携を継続できたのは、ユーザーの方々のおかげです。とても嬉しかったですし、勇気をもらいました。
石田:それは、とても嬉しいお話ですね!
今回、銀行とのAPI連携が進んだことで、『マネーフォワード ME』で新しくできるようになることなどはありますか?
西方:今連携できているAPIは、データを「参照する」だけの「参照系API」と言われるものなので、「スクレイピング」と取得できるデータはほとんど変わりはありません。ただ、セキュリティのレベルが上がったという側面では、できることが増えると思っています。具体的には、まだちょっと秘密にさせてください(笑)
石田:気になりますが、楽しみにしています!(笑)
西方:あとは今後、「資金を動かす」ことができる「更新系API」が連携できたとしたら、色々できることが広がると思っています。
石田:例えば、「資金を動かす」というのは、どんなことでしょうか?
西方:今、クレジットカードの引き落とし口座の「残高不足」の通知を出していますが、「他の口座には、残高が入っているのに」ってことがありますよね。その場合、ユーザーは、一度アプリを閉じて銀行のネットバンキングにログインして、振込をしなければならない。そういった面倒なひと手間を、『マネーフォワード ME』内で完結できたらいいなあと思っています。
石田:通知を見たら、その場ですぐ送金できるってことですよね。便利ですね!
APIって、金融以外だとどんな活用事例があるのでしょうか?
神田:例えば、食べログでお店の場所を見ようとするとGoogleMapに繋がりますが、それもGoogleのAPIを連携させているからなんです。
内波:APIにも色んな種類があります。何かのサービスにログインするとき、FacebookやYahooアカウントでログインできるのも、各サービスがFacebookやYahooのAPIを連携させているからです。
石田:意外と色んなところでAPIが活用されているんですね。
神田:あと私は、行政機関と銀行APIの連携が進めばいいなあと思います。例えば、「引っ越しをしたので住所を変更したい」という時に、銀行に登録してる住所や氏名などを呼び出して、APIで一回で更新できれば、わざわざ役所に行く必要がなくなりますよね。
石田:それは便利です!役所の場所が遠い場合、会社を休まないといけない場合もあるので。海外では、日本よりもAPIの活用は盛んなのでしょうか?
神田:オーストラリアでは、スタートアップ企業が、電力会社のAPIを接続して、電気代などを確認できるアプリを作っています。
銀行のAPI連携に限った話だと、海外と比較しても日本はそこまで遅れてないと思います。APIを提供する金融機関や利用者の数は、「Fintech先進国」と言われるイギリスにも負けない規模です。今回、国が「オープンAPI」を推進したことで、今後「APIエコシステム」を構築するための下地はできたのではないかと思います。
※オープンAPI:銀行がAPIを開放し、外部の事業者との間の安全なデータ連携を可能にする取組み
石田:これから「オープンAPI」が進むことで、便利なサービスが生まれて、私たちの生活もより豊かになることが期待できますね。今日のお話を聞いて、「API」を身近に感じることができました。
未来がとても楽しみです!
本日はありがとうございました。
(※当社のAPI契約状況については、プレスリリース「金融機関とのAPI契約状況について」をご覧ください。)