代表の辻とデザイナーで考える経営×デザインについて
こんにちは。採用PRの大崎です。
先日お伝えしたとおり、当社では株式会社THE GUILD の深津貴之氏とともに始めている新しいプロジェクトが進行中です。
このプロジェクト(以下「新規プロジェクト」)を進めていく中で、ある日、代表の辻が「デザインをもっと理解していきたい!」とポツリ。そのために、まずは社内のデザイナーとデザインについて語り合おう!となりました。
■話し手
代表 辻 庸介(写真後列左)
PFM 本部 武藤 篤司(写真後列右)
マネーフォワード X本部 佐々木 俊弥(写真前列左)
マネーフォワードフィナンシャル株式会社 猪爪 雄(写真前列右)
■写真:PFM本部 西村 美紀
■編集:採用PR 大崎 淳
武藤:では簡単に自己紹介しましょうか。
猪爪:マネーフォワードフィナンシャル(仮想通貨事業を準備中のグループ会社)の猪爪です。
佐々木:マネーフォワードX本部(金融機関や企業と新たなサービスを作る部署)の佐々木です。
武藤:PFM本部(お金の見える化サービス「マネーフォワード ME」を担当)の武藤です。今日はファシリテーターを務めます。みなさんよろしくお願いします。
辻:よろしくお願いします!
みんなはどの会社のデザインが好き?
(アイスブレイクとして、辻さんが創業以来使っているノートとペンへのこだわりを聞きました)
武藤:今回のテーマは「これからのマネーフォワードのデザインについて」です。アイスブレイクとして、まずは「この会社のデザインがいいな」と思った会社ってありますか?
猪爪:僕は「星野リゾート」。星野リゾートに泊まった際に過ごす時間の贅沢さ。これは働く人や建物が一貫して宿泊客のことを大切に思っているからこそ生まれていると思うんですよね。これは一つのUXの形かなと感じています。
辻:そういう意味で「Uber」はいいですよね。UXが本当に素晴らしい。タクシーを呼ぶところ、乗るところ、そして最後に決済するところまで。全てのユーザー体験が計算されている。UIからUXまで完全に作り込めているよね。
佐々木:僕はやっぱり「Apple」ですかね。UXもそうですけど、プロダクトへのこだわりがすごい。両方優れているという点で。
辻:僕は、ジョナサン・アイブ(Appleのデザイン責任者)の本を読んで衝撃をうけましたね。Appleのモノづくりの裏側が見れましたよね。
佐々木:強烈なこだわりがありますよね。
辻:モノづくりのこだわりがある人が、「無理だ!」と言ったことに対して、「いや無理じゃない、やるんだ!」って言って限界を突破させるパワーというか執念を、Appleからは感じますよね。
佐々木:そういえば、ジャック・ドーシー(Square CEO。Twitterの創業者)もスティーブ・ジョブズに似てるところがあると本で読みました。先日、辻さんはジャック・ドーシーにお会いしてどう感じましたか?
辻:ものごとの本質を突いてシンプルにする力がすごい。なにか提案しても、「それいらない」と言われるだけなんじゃないかな。あの人たちと働くの大変だと思いますが、Macなどが生まれたのはこのシンプルにする力のすごさだと思うんですよね。
「経営スタイルは経営者の性格が色濃く反映される」
猪爪:今のマネーフォワードは、ジャック・ドーシーや、スティーブ・ジョブズとは違って、事業部側にある程度権限を委譲していると思います。一転してジャック・ドーシーやジョブズのやり方を取り入れたいと思ったことはないんですか?
辻:んー。たまにやってみたいと思うんですけど、一方で上手くいかないだろうなって思っています。ジョブズとかジャック・ドーシーって、強烈なプロダクトやサービス至上主義ですよね。言うなれば、「その他のことはすべて二の次である」といって、組織を破壊したり、一緒に働いている人を結果的に苦しめてしまったりと多くの負の面もあると思っています。
こういった経営スタイルには経営者の性格が反映されると思います。だから僕に合わない経営スタイルを取り入れたとしても、いいアウトプットは出ないと思う。僕は僕なりの経営のやり方が多分あると思っている。僕のスタイルはどちらかというと、各分野のプロフェッショナルを集めて、それぞれの思いを尊重しながら、みんなで一緒にモノづくりをしていきたいです。
猪爪:その中で、「もっとこうしたい」とか将来的なイメージがあれば聞かせてください。
辻:「ユーザーさんに対する価値提供をもっととがらせたい」というのはありますね。価値提供って言うのはもっととがってやらないといけないし、もっと変わっていかないといけない。だからこそ、モノづくりに関するチームは、PDCAのサイクルが高速かつ、深さも兼ね備える必要があるなと思いますね。
マネーフォワードのデザイン組織の今までとこれから。
(この対談の様子)
猪爪:私が去年の10月に入社したばかりということもあり、2012年創業時から会社にとってのデザインチームの役割について教えていただけませんか?
辻:はじめは「マネーフォワード ME」しかプロダクトがなかったので、そのいちプロダクトのサービスデザインの役割でした。徐々に人も組織も、提供するサービスもどんどん増えていく中で「マネーフォワードっぽいものてなんだっけ?」とか、「僕たちが世の中に伝えたい価値観や世界観ってどういうものでしたっけ?」というところが、ブレてきたんですね。創業当時は、僕や、瀧さん、広報の柏木さんのように、マネーフォワードの世界観を理解してる方が外に向けて発信していました。一方で社内に世界観を「これだ!」と明示していなかったので、徐々にみんなが分からなくなってきました。そこで、デザイナーの金井さん(社長室)にマネーフォワードの世界観やMissionを整理してもらう役割を担ってもらいました。
大きな組織になっていけばいくほど、「縦と横の組織」がすごく大事だと思っていまして。事業部に所属するデザイナーを評価するのは、縦の組織だけだと事業責任者になります。しかしその事業責任者が、ちゃんとデザイナーの評価ができるのかというと、デザインのことを分かっていないとできないですよね。そうすると、縦の組織とは別に横串で、デザイナーのスキルを分かる人がちゃんとデザイナーを評価できる仕組みが必要になります。
そこで、当社は横串の組織として「デザイン戦略室」を作りました。一方で事業の成長スピードがとてつもなく速かったということもあって、上手く回らなくてデザイン戦略室をいったん解体し、各デザイナーを事業部につける形に見直しました。
デザイン戦略室があったからこそ、新サービスの立ち上げや、本社をはじめオフィスの移転や設立の際に、どういう世界観を作るかなどは整理できてきました。昨年、渡辺潤平さんにクリエイティブディレクターで入ってもらい、全社としてのMissionから各サービスを4ドメインに整理し、合わせてブランドもリニューアル。ロゴのデザインも一新して、社内のデザイナーのみなさんが頑張ってきれいに整えてくれています。
武藤:今後はどういった組織を目指していますか?
辻:これからは全社におけるデザイン責任者を作り、その責任者直下の部署で、全社のサービスデザインの指針をつくっていくフェーズに来たと思っています。おかげさまで、デザイナーも増えてきたので、マネジメントを担う方も必要になってくる段階です。これは、デザイナーがそれだけの人数いることによる非常に贅沢な悩みだと思います。デザイナーの皆さんがより切磋琢磨できる環境を作っていきたいです。
猪爪:マネーフォワード MEのデザイナーの池内さんが「MEのオンボーディング超高速改善した結果」というnoteを出してくれて、スキが70以上ついていました。デザイナーがグロースハックする文化は素晴らしいと思っているんですが、どういう経緯で文化が出来たんですか?
武藤:マネーフォワード MEの場合は、プロダクトオーナーやエンジニアの方と距離が近くて話しやすいから、「これやりたいです」といったらやらせてもらえる環境です。あとはプロダクトオーナーの西方さんが、ある程度みんなに任せているので、領域にとらわれず取り組めています。
佐々木:僕はX本部にいて、Xのメンバーがすごく優秀で、柔軟な人が多いです。そんなメンバーと一緒に、MFSD(MoneyForward Service Design)というメソッドを使って、クライアントとワークショップをしたりしながらサービスづくりをすることが増えています。自由にやらせてもらっている中で、実践を繰り返しながら自分たちのやり方をどんどんブラッシュアップしている感覚があって、とても楽しいです。
猪爪:各事業部の中で自由にトライアンドエラーが繰り返せるような環境になってきってるって、それは素晴らしいことですよね。
辻:そうですね。僕が大事にしているのは「スモールチーム」と「権限移譲」。やっぱりその方が面白いじゃないですか。事業の数値目標と実績も見て、そこに対して自分の課題感もあって、「こうしたらいいんじゃないか」ってアイデアを自分で実行して改善するみたいな。
一方でこの「スモールチーム」と「権限委譲」の課題は、それぞれのメンバーのレベルがものすごく高くないと成り立ちません。そこはかなりチャレンジングで、だからそれぞれのメンバーの成長が必要不可欠です。。だからデザインチームを作ってみんなでさらに高めあって、マネジメントの方にも入ってもらう。組織としてグロースすることが個人の成長につながるということが大切。
組織をより盛り上げるために。 とにかく新しいモノ作るチームの組成、2年で異動制度、社内留学制度というアイデア
辻:今までいろんなプロダクトを作ってきて、いっぱい失敗してきたんです。分かったのは、僕も含めて人は提供者目線で作りたいモノを作るので、「ユーザーさんが本当に欲しいもの」への思い込みが激しいですよね。だからそれをできるだけ排除した、サービスデザインをしたいんです。
武藤:デザインスプリントみたいな。
辻:そうそう。それをやりたいんですよ。一方で、現場は既存のプロダクトに集中しますよね。深津さんとも話していて、新しいアイデアを出して、モックを作って、壊してっていうサイクルを回すチームは既存プロダクトチームとは別であるべきだなと感じています。既存のプロダクトを改善するチームは、既存チームのMissionや目標があるので別にしたたほうがいい。じゃあ何が障壁かというと、すべては採用という問題に…(笑)人が足りないのはいつものことだね。6人の時も400人になっても。
佐々木:そうですね。ただ、このMFSDの手法を使いながらXの中で様々な事例を作りナレッジ化して、それを展開できたらいいなと思っています。
辻:いいですね~。猪爪さんに入ってもらった新規プロジェクトの内容も、ぜひナレッジ共有してほしい!
猪爪:そうですね。ナレッジ共有にも繋がりますが、全社横断でリソースや作ったモノの活用をどんどん進めていきたいです。視点を広げるためにも人の流動性もあげた方がいいと思います。toBもtoCも本質的なところは共通していると思います。
辻:そうしたら、2年で異動するって制度ってどう!?MFチャレンジシステム(所属部署の上長に申請せずに他部署へ異動希望が出せる制度)もあるけど、責任感が強いとなかなか異動できないと思うから。
猪爪:MFチャレンジシステムの手前に留学制度みたいなのを取り入れるのはどうでしょうか?例えば1週間だけ、他のドメインのサービスのデザインやるとか。「こんな難しいことやってるんだ!」と感じられるかも知れません。
武藤:toCのマネーフォワード MEからtoBのマネーフォワード クラウドシリーズに異動してみるとか。
猪爪:デザインから離れて営業をやってみて、「ああ、物を売るって超大変なんだ」ってわかったり。
辻:分かるよね。もう売るのとかってめちゃくちゃ大変だからね。お互いそれぞれ大変だから、リスペクトがより一層大事になりますね。
猪爪:営業の方が、デザインや開発を体験すると無茶ぶりとかしなくなりますよね。「コード1つ書くのにこんなに大変なんだ」っていうのが分かるのは、良い文化交流だなと思います。情報の流通量をあげて、みんなで「なにが良いのか」を議論するような文化的な土壌をこれから作っていきたいです。そうするとさらにエキサイティングに働けるんだろうなと感じますね。
「モノづくりに対するこだわり」と「経営判断」が対峙する瞬間
辻:あと、デザインを含むモノづくりに対するこだわりと、経営判断がぶつかる瞬間ってすごく難しいなといつも思っています。僕だってしっかり時間かけていいモノを作りたいんです。でもビジネスだからこそ、他の会社よりもなるべく早く出さないと意味ないじゃないですか。みんなが不幸になる。だからすごく悩みますね。
猪爪:経営者視点とモノづくり視点みたいなバランス感覚が重要だと思うんですが、なかなかぶつかることが多いですよね。「今の状態だとまだ出せない」「いや、今すぐに出した方が良い」って
辻:それは健全なこだわりだといいよね。ここも、お互いリスペクトだとは思っていて、例えばブランドの変更などの経営判断は経営者がするべきだと思っていて。逆にデザインで佐々木さんがMFSDの手法で作ったモノが出てきたら、それは僕が信じるっていう。なんかそういうお互い信じあえる組織が良いなって。
猪爪:合わせて、ボトムアップの動きもすごい大事だなぁと感じてますね。今はデザイナーが事業部に紐付いて忙しくなりがちで、全社っていう俯瞰した視点がぽっかり抜けていたんですよね。これは、CDO室のような専門チームを作るのか、辻さんのアイデアのように2年で異動するといった仕組みを作って、全社的な視点を身につける。これからどうしていこうか、ちょうどデザイナー陣でも喧々諤々と議論している状況ですごく面白いです。
デザイナーから見るマネーフォワードってどんな環境?
武藤:デザイナーのお二人から見て、マネーフォワードってどんな環境ですか?
猪爪:デザイナーに裁量があり、結構任せてもらえるような環境です。他にも、とあるプロジェクトでデザインの改善で約300%CV向上など、デザインがビジネスに良くも悪くも影響を与える環境の中、数値をウォッチし、デザインを改善している環境だと思います。
辻:デザイナーとエンジニアが企画と近いというのがやっぱりすごく面白いですよね。上流にデザイナーが入るっていう。大規模な会社だと、企画側から「これやって」と降りてくるだけじゃないですか。ただ、その企画が間違っているときの下流工程の悲劇というか…(笑)どんだけ頑張っても企画自体が間違ってるから、取り返しがつかない辛さ。
猪爪:どんなに設計頑張ってデザイン美しくしても、企画が間違っていたら誰も使わないって言う(笑)
辻:だから上流にデザイナーが入るってものすごい大事。
猪爪:デザイナーって「抽象的なモノを具体的にする力」があるのかなと思います。デザイナーが企画に入ってると、出た意見やアイデアを具体的にして「違ったよね」っていうトライアンドエラーをより早く回せるのかなと思います。
辻:抽象的なモノを具体化するって、本当に僕にない能力ですよ。(笑)金井さんにも「XXみたいな感じで〇〇な風に伝えたいんだ」って言ったら、具体的に落としこんでくれて、「ああ、そうそう!!」とか、「あ、ここもうちょっとこうやって変えたい!」という議論に繋がる。これは本当にすごい能力ですよね。
佐々木さんから見てうちはどんな環境?
佐々木:うちのValue(User Focus/Technology Driven/Fairness)ってとてもバランスがいいなと思っています。User Focusがデザイン、Technology Drivenがテクノロジー、Fairnessがビジネスに関連するValueと捉えると、この3つはイノベーションに必要な要素と言われているので、この3つを全員が体現しようとしていければ、すごくいいチームになると思っています。
武藤:今出た「イノベーション」を起こすために、辻さんはどういったことを考えてますか?
辻:日本だけじゃなくて、海外でも一番先進的とされるデザイン手法とかデザインシンキングなどをちゃんと勉強して試せる組織を作りたいです。
あと、もっと僕らはシンプルにならないといけないんでしょうね。会社が大きくなるにつれて、「全員を幸せにするサービスを作ろう!」って思いがちですが、そんなものはないですよね。「(特定の)このユーザーを幸せにする」と決めてプロダクトをもっととがらせる。貯金アプリのしらたまもそうですし。とがらせたプロダクトをいくつも作っていってプロダクト群を作る。とにかく1つ1つをもっとシンプルにしていきたいです。一方で、toCのサービスはいろんなユーザーさんから様々な意見をいただくので、難しさもありますよね。
武藤:ユーザーインタビューをしていても、明確な結果を出すのがなかなか難しかったりしますしね。
辻:逆に言うと、思いの強いリーダーが、「これだ!」と言って推進するほうがいい。
武藤:掲げたゴールに向けてみんなで走って行くというか。
辻:toBはある程度正解があるんですよね。でもtoCは正解といえるものは良くて2、3割。だから、7割以上は外れる。だからtoCの事業は大変なんですよ。もちろん、この大変さがtoCサービスを作る醍醐味でもあるし、難しさでもある。そんなtoC向けで素晴らしいサービスを他にも作りたいです。
猪爪:目指すなら一番ってのは分かります。Uberを超えるやつ作りたいです。
辻:Uberが出来て、僕たちが出来ないわけがないですよ。絶対にそう思います!
デザイナーから代表の辻さんに期待すること。辻さんからデザイナーに期待すること。
武藤:最後にお互いに期待すること、辻さんからデザイナーのお二人に期待したいこと、逆にデザイナーのお二人から辻さんに期待したいことはありますか?
猪爪:僕は辻さんから、「こうしたいんだ!だからみんなで頑張ろう!」っていう話を1時間でも2時間でも、何時間でも聞きたい。「何がしたいんだ」っていうのをみんなで聞いた上で、もっと切磋琢磨して意見を交換できる会社にしていただければと助かります。
辻:分かりました!前はもっとお伝えしていたのですが、よりお伝えするようにしますね。
佐々木:僕はX本部がすごくいいチームで、任せてもらっていて、言うことはないです。強いて言うなら、機会があればX本部だけでなく、他のところにMFSDのナレッジを活用する機会を作っていただきたいです。
辻:MFSDはぜひ広めて欲しいです!最後に、僕も経営者として日本最高に留まらずグローバルのトップ水準を目指します。だからこそ、デザイナーのみんなにもグローバルでもトップのデザイナー集団になって欲しいです。そのために何が必要か、会社としてどういう応援した方がいいのかとか、遠慮なく言ってください。将来的に「もしかして、マネーフォワードのデザイナーですか!?すげー!!!」みたいな言われるようにみんなで高みをめざしていきましょう!