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少し先の未来を可視化して、ユーザーのお金に対する課題や不安を解決したい!~“Money Forward Lab”設立の想いを語る~

3月6日(水)に、ユーザーのデータを利活用することにより、少し先の未来を可視化する研究所“Money Forward Lab”(以下「Lab」)の設立を発表したマネーフォワード。実は、設立に至るまでには様々なディスカッションとチャレンジがあったようです。今回はLabの設立をリードした二人に、Lab立ち上げの経緯と今後の展開について、お話を聞いてきました!

■話し手
取締役執行役員 CTO 中出 匠哉(トップ写真左) 
Money Forward Lab所長 北岸 郁雄(トップ写真右)

■聞き手
広報 早川 有紀

「自らが新しいテクノロジーを生み出していく」会社にしていきたい

早川:まずは、Labを設立したいと思った理由について伺えますか。

中出:マネーフォワードが大切にするValueのひとつに、「Technology Driven」があります。これまでも、アカウントアグリゲーション技術(※)を活用し、「お金の見える化」を通じて、個人の家計や企業の経営改善をサポートしてきました。しかし従来は、どちらかというと「他の誰かがつくったテクノロジーを利用している」という認識があり、「自らが新しいテクノロジーを生み出していく」会社になりたいと常々考えていました。また私の中で、技術的チャレンジが少ないという課題を認識しており、実際社内からもそのような声が挙がっていました。当社のユーザーの方から要望をたくさんいただき、それがどんどん積みあがっていく。でも中には解決が難しいものもありますよね。そうした要望に対して、より迅速に対応したい、技術の進化のスピードをもっと速めていかなければならない、という焦りを感じていたのです。そこで、新しい技術的チャレンジをしたいと思い至るようになりました。それが、Labの設立につながりましたね。

(※インターネットバンキングやクレジットカードのWEB利用明細など、複数の異なる金融関連サービスの口座情報を集約する技術。)

早川:Labの立ち上げはいつ頃から考えていらっしゃったんですか?

中出:2016年あたりでしょうか。Labを設立したいとはじめに議論が出たのは、私がCTOになってすぐですね。

早川:はじめに社内でその話が出たときは、どのような議論があったのですか?

中出:もちろん社内で理解をしていただいてはいたのですが、Labの設立というのは、会社からすると大きな投資ですよね。投資には、当然ですがリターンが求められる。また、Labを設立したところで、どのように運営していくのかを考えるだけで骨の折れる仕事です。やはり実際にLabの立ち上げや運営を経験した人材がいないと厳しいな、と実感しました。

「お前にしかできない仕事がある」と誘われ、Lab設立構想の話を聞くことに

早川:その実感があって、ふさわしい人材を探していらっしゃったんですね。北岸さんは、LinkedIn日本代表の村上さんにご紹介いただいたんでしたよね。どのような経緯で知り合われたんですか?

中出:そのころすでに、良い人材はいないか探しており、数人お会いしてはいました。しかし当時は、このような採用には時間がかかることは理解していましたし、明確にいつまでにという期限を設けていたわけでなかったため、長期的に考えて良い人がいれば、というスタンスでしたね。もともとLinkedInの村上さんとは月に1度お会いする仲だったのですが、マネーフォワードが今後やっていきたいことと、それを実行するには足りていない現在のピースをお話ししている中で、「良い人いないですかね?」と彼に相談したら、「変わった男がいるよ」と紹介いただけたんです。

早川:「変わった男」…(笑)。北岸さんに初めてお会いした印象は、いかがでしたか?

中出:変わった男と言われればそうかもしれないですが(笑)、すごく良い方だったので、お会いしてすぐに、マネーフォワードに来てほしいなと思いましたね。

早川:北岸さんの方はいかがでしたか?

北岸:確か去年の今頃ですね。私が前職のオフィスで村上さんにばったりお会いしたときに、突然「お前にしかできない仕事があるんだけど、話聞いてみない?」と言われたんですよね(笑)。私の研究所立ち上げの経験が生かせると思って、声をかけてくださったようです。その後、LinkedIn村上さん、CISOの市川さん、CTOの中出さんと私の4人というメンバーで、丸の内ランチをすることになり、その場でLabの構想を伺いました。

中出:はい。そのタイミングでは、マネーフォワードという会社のことを知ってもらおうと思ってお話しした気がします。すぐに来てほしいというよりは、そのコミュニケーションで興味を持ってもらえれば、と考えていましたね。

北岸:そのランチのあと、もう一度詳しくみんなで話してみようということで、引っ越し前の当時のオフィスへ遊びに行ったときに、CEOの辻さんに初めてお会いしました。辻さんは「研究所をつくりたいんだよ」と何度も仰っていた記憶がありますね。私は当時、すぐの転職は考えていなかったので、副業として不定期で設立に向けたディスカッションを深めていくという関わり方であれば是非お手伝いしたい、と伝えました。1回目のオフィス訪問で、そのような話になりましたね。

早川:1回目のオフィス訪問で決めた理由は何だったのですか?

北岸:やはりみなさんの人柄が良く、働きやすそうだと思ったのが大きいです。その場で、次から設立に向けて何をするべきかという話をした気がします。私が次回までに叩きを作ってくるので、それに関して議論させてくださいという流れでしたね。

早川:そこからはどのように議論を深めたのですか?

北岸:3~8月くらいまで3、4回ほどディスカッションを重ねました。その間に、「この会社でイノベーティブなことをやりたい!」という20名ほどの社員とミーティングをさせていただきました。データ基盤に古くから携わっていた社員とは、ほとんどお話ししたと思います。8月初旬の段階で、研究所設立までの要点や骨子などはおおむね固まっていましたね。

転職の決め手は、2度目の研究所立ち上げチャンスと、一緒に仕事をする仲間との働きやすさ

早川:そのあと、どのような経緯で転職に至ったのですか?

北岸:そして管掌していた業務のフェーズが変わり、テクノロジーよりもファイナンスに軸足が移り始めた頃に、再び中出さんから「マネーフォワードに入社して働いてみないか?」とお話をいただいたので、9月ごろに転職を決意しました。

早川:退職の話をしたら、前職で驚かれたんじゃないですか?

北岸:そうですね。退職の件を上長や同僚に話したときは非常に驚かれて、「(元々のキャリアだった)自衛隊に戻るのか?」と聞かれたとこともありました(笑)。一方で、上場企業で研究所を2度も設立できる機会をもらえることは、まずあり得ないことですし、いただいた機会は活かすべきだと強く思いました。環境が変わることに対する不安もありましたが、副業期間に関わったマネジメントの方々の人柄や、ディスカッションに加わってくれた社員のみなさんの情熱に触れ、転職を決意するに至りました。

スタートアップならではのスピード感と「ユーザーにとっての価値」を真剣に考える社員の多さに驚き

早川:実際に入社したのが12月ですね。Lab設立までの3か月の間に、どのような準備をしたのでしょうか?

北岸:実は…入社前と入社後では、だいぶ想定が異なりました。研究テーマについても、まさか自然言語やUI / UXをやることになるとは思っていなかったんですよね。それは、入社後に改めて40名ほどの社員に実施したヒアリングの結果を踏まえての結論でした。前回と異なり、入社後はほぼすべての部署にヒアリングをさせていただきました。CS(カスタマーサポート)に至っては、ストーカーのように張り付いて、後ろから対応状況を眺めていたり…(笑)。そして、「本当にこの会社で注力すべき重点テーマは何だろう」と客観的に検討した結果、先日発表した「機械学習 / 深層学習」「自然言語処理」「UI / UX」という3領域に落ち着きました。やはり入社してみないとわからないことがたくさんあるなぁということを学びましたね。

(上図は“Money Forward Lab”が今後取り組む研究テーマ及び技術領域)

早川:Labの立ち上げ準備中、マネーフォワードらしいなと思ったことはありますか?

北岸:そうですね。社員にヒアリングを実施しても、嫌がらず積極的に話してくれたことでしょうか。みなさん共通項として、課題認識と未来にやりたいことがきちんと言語化されていて、「データを活用して、ユーザーにとっての価値をより高めていきたい」と真剣に思っていました。他には、とにかくスピードが速い、と思いました。前回の研究所立ち上げには構想から設立まで2年かかりましたが、それを2、3か月で遂行するというスピード感。スピードに対するプレッシャーは常に感じていて、今までにない刺激でしたね。また前回とは、設立までのアプローチが大きく異なりました。今回は、LabのMVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)からまずつくりはじめました。マネーフォワードは社内にMVVCが浸透していたため、Labの設立時もきちんとそこからつくらないと方向性を誤ると思い、かなり配慮しながら進めましたね。例えると、前回は、役者はいたけど舞台装置がない。役者となる優秀な研究者は揃っており、彼らが気持ちよく働ける環境を整える舞台装置をつくったイメージです。一方今回は、演目と舞台装置だけ先につくったけど、役者はこれから(笑)。舞台監督ひとりで舞台装置を眺めている感じです。

早川:中出さんは、Lab設立にはどのように関わっていらっしゃったんですか?

中出:北岸さんが入社する前に、Labの予算確保や、プロジェクトメンバーの選定などをしていました。彼の入社後は、週1回話をしたくらいですね(笑)。LinkedInの村上さんにも「北岸さんは好きなようにやらせておけ」言われていましたので(笑)、基本的に彼の裁量に任せ、関係者調整などのサポートが必要な時に動くというやり方が一番良いと考えました。

“Money Forward Lab”が実現していきたい世界とは

早川:これからLabでやっていきたいことを教えてください。

北岸:“Money Forward Lab”は、「お金のメカニズムを解き明かすことで、人生に笑顔と驚きを。」をミッションとして、テクノロジーとデータを駆使し、家計・資産・会計の少し先の未来を可視化することで、すべてのユーザーのお金に対する漠然とした不安や課題を解決することを目的としています。社内でヒアリングを実施したことで、3つの研究テーマを炙り出すことができ、その目的を達成するために何をやるべきかがはっきりしました。これら3つの研究テーマを突き詰めることにより、一歩先の未来を提示し、ユーザーが抱えている課題を解決することができると我々は考えています。

具体的には、当社が定義している4つのビジネス領域(※)のうち、Money Forward Home (BtoC) 領域であれば、生命寿命が長くなり、健康寿命も延ばしていこうという国の取り組みがある中で、自分の資産寿命がこれらとマッチしているか漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃると思います。資産寿命を延ばすためには、まずはユーザーの資産価値を毀損することなく、家計を分析し、改善することで資産形成のための投資資金を生み出すことが重要です。そのための家計改善や資産形成コンシェルジュといったサービスが考えられます。

(※4つのビジネス領域:“Money Forward Business“、”Money Forward Home“、”Money Forward X”および”Money Forward Finance”)

Money Forward Business (BtoB) 領域であれば、すでに導入されている『マネーフォワード クラウドシリーズ』の自動仕訳の精度向上です。現在でも便利に使っていただく基準には達していると認識していますが、まだまだ改善の余地はあります。自動仕訳の精度があと1%、2%程度改善されたところで、ユーザーの方々に大きな変化は体感いただけないかもしれません。しかし、そのための改善努力により、ユーザーにとっては、微々たるものかもしれないが使い勝手の良さという体験を積み重ねることができ、我々にとっては、獲得できる知識やノウハウが深まり多様性が広がるため、実は非常に大きな価値があると考えています。自動仕訳の研究が、例えばCSのチャットボットなどの他の技術に転用できたりするかもしれないですからね。

早川:Labは現在、研究員を募集しているようですが、共同・委託研究も積極的に推進していくようですね。

北岸:はい、採用の方は、ありがたいことにさっそく応募をいただいていますね。また、採用だけだと研究員の入社まで早くても数か月先になってしまいますし、研究ノウハウを蓄積していくという意味でも、共同研究の方も同時進行で推進していきたいと考えています。企業だけでなく、大学とも一緒に研究を進めたいですね。現在、複数の大学の先生方とお話ししていますが、先生方のほうから様々な研究の提案してくださいますし、事業で使ってほしいと言ってくださる大学もあり、非常にありがたいです。

早川:それでは最後に、これからの意気込みを教えてください!

北岸:立ち上がったばかりのヨチヨチ歩きの研究所ですので、みなさんと議論しながら、一緒に育てていきたいと思っています!

中出:せっかく立ち上げた研究所なので、ユーザーがまったく期待していなかったくらいの価値を提供してほしいですね!

早川:プレッシャーですね(笑)。ありがとうございました!


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